皆さん。「蔵出しみかん」ってご存じでしょうか?
蔵出しみかんは年末に収穫したみかんを2,3か月間貯蔵箱で熟成させ、年明けに出荷する本格貯蔵みかん。
先日この技術が評価され、和歌山県の下津地域が日本農業遺産に認定されました。
でも、生ものであるみかんをどうやって2,3か月も貯蔵するの??と思う方も多いと思います。ここでは先人からの知恵が詰まった、下津地域ならではの貯蔵庫の仕組みを紹介したいと思います。
みかんの貯蔵に適した条件とは?
貯蔵庫の仕組みの紹介の前に、まずはみかんの貯蔵に適した条件をご紹介いたします。
みかんの貯蔵において重要な要素は温度と湿度。
特に温州みかんの貯蔵に理想的な環境は以下の通りになります。
温度 | 3~6℃ |
湿度 | 85% |
一般的に果物や野菜を長く保存するには、傷まないように気温は低く、しおれないように湿度は高くというのが基本となります。
ただ温州みかんの場合は温度が低すぎると、低温障害が出てしまったり、湿度が高すぎると浮皮が発生し腐敗につながってしまったりする場合もあります。
※詳しくは みかんの保存方法 のブログをご覧ください
従ってみかんを適切に貯蔵するには温度と湿度を理想的な環境に保つことが何よりも重要になります。
貯蔵庫の秘密
貯蔵庫で温度と湿度をどうやって管理するの?
冷房とか加湿器でもついてるの!?
と思うかもしれませんが、蔵出しみかんの貯蔵技術は400年も前から伝わるもの。
当然冷房や加湿器なんてついていません。そういったものを使わなくても、うまく温度や湿度を調整できるように、貯蔵庫には様々な工夫が施されています。
貯蔵庫の模式図
貯蔵庫の模式図はざっとこんな感じ。
いろんな秘密が潜んでいそうですね♪
こちらでは温度や湿度を保つ貯蔵庫の秘密を一つ一つ紹介していきます♪
①木造建築
蔵出しみかんの貯蔵庫は木造建築。柱や梁、扉など、すべて木で作られています。
鉄などと違い、木は湿度が高いと水分を吸収し、湿度が低いと水分を放出するため、湿度をある程度保つ働きがあります。
②土壁
貯蔵庫の壁には土壁が利用されています。土壁は主原料が土のため、断熱効果が高く、庫内の温度を一定に保ちます 。また、室内の湿度が上がれば水分を吸収し、乾燥すれば溜め込んだ水分を放出するという調湿効果もあります。
③地下の吸気口と天窓
温度や湿度の調節には、換気が不可欠。貯蔵庫には、地下経由の吸気口と屋根上の排気口があり、吸排気口の開閉により、換気量を調節できるような構造になっています。
もちろん通常の窓からも換気をすることも可能です。
④木の貯蔵箱
貯蔵庫と同様、貯蔵容器も木製。木の貯蔵箱にも 湿度をある程度保つ働きがあります。また貯蔵箱内でみかんが腐敗してしまった場合でも、果汁を木箱が吸収するため、下の段まで腐敗がうつらないというメリットもあります。
貯蔵の方法
自然の働きを活かした蔵出しみかんの貯蔵庫では、換気によって蔵の中の温度、湿度を調節します。ここでは冬場の湿度や温度の調整方法を簡単に紹介します。
湿度が高いとき
みかんは収穫後も呼吸、蒸散をするため、庫内の湿度は上がりがち。湿度が上がると、皮が張ったり、浮皮が発生したりします。そんなときは換気口をできるだけあけて、乾燥した外気を取り込みます。
湿度が低いとき
外気を入れすぎたりして湿度が下がり、長い時間そのままになるとみかんがしぼんできます。みかんの長期貯蔵に乾燥はNG。換気口を閉じて、湿度が上がるように調整します。
温度の調整
庫内の温度が高いときは、夜間に換気することで夜の冷たい風を取り込むことで温度を下げます。また、外気温が高くなる昼間は密閉して庫内温度の上昇を防ぎます。
ただし、 1~2月は夜間の気温が氷点下まで低下する場合があるので、夜間の換気はできるだけ控えます(低温障害を防ぐため)。逆に外気温が次第に高くなってくる2月下旬以降は、気温が低くなる夜間を中心に換気をすすめます。
このように蔵出しみかんは日本の冬~春の気候を巧みに利用しながら、考え抜かれた貯蔵庫で温度と湿度を保ち、貯蔵されています。
いかがでしたでしょうか?
このように、蔵出しみかんの貯蔵庫には、みかんを貯蔵するための知恵が詰まっています。
そんな先人の知恵を紡ぎながら、蔵出しみかんの貯蔵に取り組んでいこうと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。