みかんの摘果(てきか、てっか)って皆さんご存じでしょうか?
みかんは放っておくと必要以上に花を咲かせ、非常に多くの実をつけてしまうため、いろいろな問題が発生してきます。
おいしいみかんを作るには、肥料や剪定が大事になりますが、それと並んで重要なのがこの摘果という作業。
ここでは時期別の1年間の摘果の種類や目的について紹介したいと思います。
摘果とは!?
みかんの木に成りすぎた実を人の手で落としてあげることで着果量を調整してあげる作業です。
みかんの木は必要以上に実をつけることが多いです。その実の一部はみかんの木から自然と実が落ちていく生理落果により、みかんの木自身が実の調整をしてくれます。
ですが、それでも必要以上に多くの実が残ってしまうことがほとんど。なので摘果によってその成りすぎた実を人の手によって調整していきます。
みかんの摘果を動画で解説
摘果をしないとどうなる?
・みかんの実の大きさは?
みかんの実の大きさは小さくなります。みかんの木は葉で養分を作ります。そしてその葉で作られた養分で実は大きくなります。しかし、葉に対して実が付きすぎるとみかん1個あたりの養分が少なくなります。その結果、実が大きくすることが出来ずに小さくなってしまいます。
・みかんの味は?
みかんの味はおいしくなりにくくなります。みかんの味を良くする成分(主に糖分)もみかんの葉から作られます。しかし、同様に葉に対して実が付きすぎるとみかん1個当たりの養分が少なくなってしまいます。その結果、実に十分な養分が行き渡らず、おいしいみかんになりにくいです。
・みかんの木の状態は?
みかんの木は隔年結果が激しくなってしまいます。
みかんの木は、二年に一回みかんがたくさん取れる表年と取れる量が少なくなる裏年があります。
たくさんみかんを成らせるとみかんの木は頑張りすぎて、次の年に全く実が付かなく
なるので、隔年結果がより進んでしまい、安定生産が難しくなります。
摘果をする理由
というわけで摘果をする理由以下の3つとなります。
- 果実肥大の促進
- 果実の高品質化
- 隔年結果の是正
それぞれの目的に応じて、以下で紹介する摘果の種類や時期を調整しながら摘果を進めていきます。
摘果の種類
摘果の種類は大きく分けると部分全摘果と間引き摘果の2種類。それぞれについて簡単に説明すると以下の通りになります。
部分全摘果
部分全摘果とは特定の枝についた実を全て落とす摘果になります。
枝についた実を全て落とすことで、翌年のための養分を枝や葉に蓄えわえることができるので隔年結果の是正につながります。
間引き摘果
間引き摘果とは枝についた実を数個間引く摘果になります。
みかんの実を間引くことで、残った実に集中して養分を与えることができるので果実の肥大促進や品質向上につながります。
摘果をする時期は?
摘果の時期は大きく分けると以下の4つとなります。
摘果の時期 | 目的 | 行う摘果の種類 |
---|---|---|
5月上旬~6月下旬 開花期~生理落果終了 | 隔年結果の是正 | 枝別全摘果 (木の上部を全摘果する) |
7月上旬~8月中旬 生理落果終了~果実肥大のピーク期(粗摘果) | 果実肥大の促進、隔年結果の軽減 | すそ懐は全摘果、それ以外は間引き摘果 |
8月下旬~9月下旬 果実肥大のピーク期~成熟期(仕上げ摘果) | 品質の向上 | 間引き摘果 |
10月上旬~11月 成熟期~収穫期(樹上選別) | 選果労力の軽減 | 間引き摘果 |
- 初期の段階で摘果は樹体により多くの養分を蓄積することができるので隔年結果を抑えるには効果的
- 一方で後半の摘果になるほど樹に着果負担をかけられるので高品質生産には効果的
→樹によっての使い分けが必要になります
摘果計画の立て方
樹によって使い分けが必要と言われても、いざ摘果をするとなると、どうしていいのか初めての方には分かりづらいと思います。
というわけで、みかんの実が多い木から実が少ない木までの年間の摘果計画の立て方を紹介したいと思います。
みかんの実が多い木の場合
①隔年結果が激しい場合
5月のみかんの蕾の時期に上部全摘蕾をします。
労力がかかるので時間がない場合は、生理落果中の風呂敷摘果や生理落果終了後の上部摘果でも可。
※風呂敷摘果や上部摘果は今後解説予定です。
その後の処理は②隔年結果がそれほどひどくない場合と同様になります。
②隔年結果がそれほどひどくない場合
7月~8月、粗摘果。
すそ懐は全摘果し、外側も間引き摘果。1年間の全摘果量の約50%(もしくは葉果比10~12程度)を目安に着果量を調整します。
8月下旬~9月下旬、仕上げ摘果。
みかんの適性着果量である葉果比25になるように思いっきり摘果をします。
- 葉果比とは・・・葉に対する実の数のこと(温州みかんの適性葉果比は25程度)
10月、樹上選別。
余裕があればやってみましょう。
みかんの実が程よい木の場合
開花期~生理落果期は摘果不要。
7月~8月、粗摘果。
実が多い木の場合と同じく、すそ、懐は全摘果しましょう。それ以外の摘果は必要ありません。1年間の全摘果量の約20%(もしくは葉果比10~12程度)を目安に着果量を調整します。
8月下旬~9月下旬、仕上げ摘果。
みかんの適性着果量である葉果比25になるように摘果をします。
10月、樹上選別。
余裕があればやってみましょう。
みかんの実が少ない木の場合
開花期~生理落果期は摘果不要。
7月~8月の粗摘果も不要。
8月下旬~9月下旬に仕上げ摘果。
明らかな傷みかんのみを摘果。摘果は必要最低限に抑えます。
10月に樹上選別
余裕があればやってみましょう。
実が少ないと摘果が不要で楽と思う方もいるかもしれませんが、おいしいみかん作りには実をしっかりとつけて着果負担をかけてあげることが必要!摘果、施肥、剪定などでなるべく隔年結果を減らし、毎年着果させられるようにしましょう!
以上、今回は摘果について紹介させて頂きました。
実が多いほど摘果は大変ですが、しっかりと摘果をすることで隔年結果を抑えて毎年高品質なみかんを作ることができる重要な作業になります。
今後それぞれの時期の細かい摘果方法も解説しますので、乞うご期待!
最後までお読みいただきありがとうございました。